今回は、手にしてから約3か月間、約2000Km乗った 2020年モデルKTM 250EXC-tpi sixday’sについて、私なりのインプレッションをお伝え出来ればと思います。
この間の機関的なトラブルは皆無、ミッションオイル(NEWTEC10W-50)を約500Km走行時に交換しました。
オートクラッチリクルスの使用もあり、かなりひどい汚れだったので新車初回交換は早めの方が良いです。
途中、tpiの意味や2stの仕組みとは何か?とか、パワーバンドとは何か?何故出来るのか等についても触れて行きますので最後迄ご覧下さい。
現在の機体使用状況
まず、私の機体の使用状態と言うのは、林道走行での使用100%と言う事なのですが、私自身トランポを持たない自走組なので、自宅から林道迄や、林道から次の林道迄のリエゾン区間は当然舗装路走行になります。
居住地から林道迄は近い所で大体40Km程あり 県外遠征の時は片道100Km高速道路も使用します。
なので、現在走行距離2000kmとは言うものの、うち約7~800km程度は舗装路の走行になるかと思います。
林道走行に最適化の主な変更点
そして、私のバイクは林道走行用に色々カスタマイズをしてます。
SIXDAY’Sはそのまま公道を走れるバイクとは言う物の、レース走行を前提としていて公道走行用に日本の法規に合わせる為の装備としか思えない様な装備仕様も見られます。
1:楽する為オートクラッチのリクルス3.0の装着
既に3台前のバイクから付けていて転倒してもエンジンが止まらないとか、疲れてきた時にクラッチを使わなくて良いと言う自分に取っては必須のアイテムとなっています。
勿論欠点もあります。不用意に回転を上げて機体が暴走とかもあり、自身のガケ落ちはこれも原因の1つです。
2:パンクリスク軽減の為、簡易チューブレスのタブリスの装着
空気圧を0迄下げてもリム落ちが無いのと、パンク修理道具を持ち歩かなくても良いのとビートストッパーやチューブが無いから軽いのが装着理由です。
3:昔e-bayで買った中古のスコット製のステアリングダンパーの装着
これはガレ場等で不用意にハンドルを弾かれない為の装備です。
4:オーバーヒ-ト対策でパワーパーツのラジエターファンの装着
5:燃費悪いので純正の13Lビッグフューエルタンクの装着
やはり2ストレーサーでGASは喰います。同行のCRF250Lと比べるとCRFが5L使った時はこちらKTMは8L喰ってます、約1.6倍喰います。
6:ラジエターを守る為にアルミビレット製のラジエターガード装着
7:リアディスク保護の為リアディスクガード(通称シャークフィン)
8:足つき改善の為、前後20mmのローダウンkit導入
前後とも新車納車時に変更して貰いました。
9:パワーパーツの20mmダウンのローシート
これでサスペンションローダウンと合わせトータル40mmダウンとなります。
10:悪路で巻き込むリアフェンダーをフェンダーレス加工
純正のままでは、少しのギャップでもナンバーやフェンダーを巻き込む可能性があるので撤去がお決まりです。
11:リアウインカーを貼付LEDにして標識の下に変更。
ナンバーフレームの下の15㎜位のスキマに貼り付け式のウインカー装着です。
12:確実に踏める様にビッグペダルに変更。
純正は素晴らしく小さく偶に踏み損じを起こすので大きいのに変更です。
13:純正ミラーは、折れないトライアルミラーに変更。
14:LEDウインカーのハイフラ防止リレーを交換
このままでは、ハイフラッシャーになって、何より下品なのでLED用のリレーに変えます。
15:暗過ぎるH4ヘッドライトとポジションランプもLED化
16:お決まりの純正ハンドガード装着
TPIとは何の略?
KTMの250-EXCtpiのTPIとは一体何の略かご存じでしょうか?
TPIは”Transfer Port Injection”の略で トランスファーつまり2ストだけにある独特の掃気ポートから燃料を噴射して混合気を燃焼室に送ると言う意味で呼ばれています。
TPIの第一の利点は回りの環境に左右されにくいと言う事に尽きます。
具体的には気温、気圧、傾斜角度等を各種センサーによって最適な量の燃料噴射を行なうとともに、分離給油システムでミクスチャオイルの混合比も80から100:1の間で変動出来るようにECU(エンジンコントロールユニット)がプログラミングされてます。
つまり、何処でもベストなセッティングが出るのが大きな特徴です。
またアクセルオフ時に燃料を自動的にカットオフする為、従来の2stと比べ最大40%も燃費が向上していると言われています。
又、以前と比べるとマップ切り換えスイッチでの違いが非常にハッキリとわかりやすくなっているのが特徴的です。
そして2ストモデルの敷居を下げる技術がFI化だったと言うKTMからのインフォメーションです。
ちなみにTPIの利点というのをまとめると、こんな様な事です。
①標高や気温などの変化で燃調を変える必要がない。(メインジェットの交換が無い)
②アクセルオフ時燃料カット等の仕様で、最大で40%燃費が伸びたと言う事で、燃費の向上で給油タイミングが長くなった。
それで実際はどうなのかと言いますと 舗装路でL/20Km程度 山でぶん回すとL/14~15Kmって感じです。
③分離給油となりオイルの携帯とか、スタンドでオイルの混合の手間がない。
④転倒時のガソリン流出がなくなった事 (キャブ車じゃないからフロートにガスを貯めていないから)
この様にとても優れたtpiですが。デメリットが無い訳ではありません。
例えば全閉でエンジンブレーキ(まぁ元々効きませんが)を使いながら減速する場面から、アクセルをワイドオープンしたときには、一瞬ツキが遅れることがあります。
物理的にダイレクトにキャブをオープンにするのと比べるとセンサーを介し掃気ポートを経由する為かと思いますが、気になる程ではありません。
私的には7個のセンサーとECUで管理されてるんで2stメンテ簡単!昔の様にバラスの楽珍って訳には行かなくなったのが非常に残念です。
思うにデメリットはこの位ですが、運悪くトラブルに等に逢ったら、簡単に自分で触れなくなった事だと思います。
TPIの構造はシリンダーの左右掃気ポート(Transfer Port)に2個のインジェクターが取りついています。
通常ならガソリンが送り込まれるスロットルボディからはオイルと空気だけが流入して、ガソリンは掃気ポートのインジェクターより掃気ポートに直噴されます。
ECUに制御された、この仕組みによって余分な燃料を送り込まず、燃費が向上し、サイレンサーエンドからのオイルの飛び散りや白煙モクモクも2stキャブ車と比べ格段に減少しています。
先程言いましたが、分離給油なので事前に混合ガソリンを作る必要もないのも楽珍です。
昔も分離給油の2ストロークは流行っていましたがアクセルに物理的に同調するオイルポンプを作動させている構造だったので急に開ければ同調して大量のオイルを流す構造でした。
TPIの分離給油はこれとは根本的に違います。
TPIは吸気温度やクランクケース内圧力、水温などを感知する7個のセンサーからの情報を基に、最適な燃料噴射を指示するECU(エンジンコントロールユニット)により、天候や標高に合わせたセッティングが不要になっています。
そしてこのエンジンにはバランサーが内蔵されているため振動も少なく抑えられています。
とは言う物のスト独特のパーシャルでのシャクリとかは改善されてるわけではありません。
2020 EXC-tpiの基本仕様はこの様なものです。
ホイールベース/1482±10㎜
最低地上高/370㎜あります.
シート高/車両重量:960㎜これに悩まされます。 ちなみに私のは40mmダウンで920mmです。
重量/半乾燥で103㎏私のフルオプションでも110Kg程度でしょう
エンジン形式/水冷2スト単気筒 /249㏄
ボア×ストローク:66.4×72㎜
燃料タンク容量tpi/9L 私のはビッグタンクなので13L
キャスター角/63.5度
変速機形式:6速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ260㎜ディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前:90/90-21 後:140/80-18 標準ではメッツラーのSIXDAY’Sがはいってます。
2stマシンのイメージはどんなものを持ってますか?
特性がピーキーでパワーバンドに乗ればドッカンパワー、マフラーからは白煙モクモク。
排気からのオイルの飛散で服が汚れる。
オイル飛散や臭いので後ろは走れない。
現代の2ストロークは ECU制御のTPIは、全てにおいて、いずれのマイナスイメージを払しょくしています。
何故2stエンジンは、そんなに悪い話が出るのか構造について少しお話したいと思います。
2ストロークエンジンのパワーバンドとは?
通常の2ストロークエンジン模式図
そもそも2ストロークエンジンのパワーバンドが狭い理由には、全て行程上の問題から来る圧縮行程の不完全さにあります。
2ストロークエンジンは4ストロークエンジンよりシンプルな行程となっており、とくに掃気の際には排気ガスを排出しながら吸気を取り込むという、同時進行的な行程があります。
効率的にも見えるこの行程でけれど、実は排気ガスが排出される時に吸気の一部も一緒に排出されてしまう側面をもっており、2ストロークエンジンの排気ガスには未燃焼状態の燃料やエンジンオイルがそのまま含まれています。
ピストンの上昇行程で掃気しながら吸気の圧縮を行う、同時進行的な行程の関係上、シリンダーストローク全部で圧縮できているわけでは無いのです。
2ストロークエンジンはエンブレが効きにくいのもこの、同時進行的な行程にあります。
ですので特に低回転域ではこの傾向が特に強くなり、圧縮が良くない分エンジンの効率もあがらないのと言う致命的な弱点を持っているのが2ストロークエンジンです。
反面、高回転域ではその問題もある程度解消されるのでパワーバンドに乗ってくると言う状況になるのですが、その回転数の範囲が狭く扱いづらいので2ストロークエンジンはピーキーなエンジンと言われるゆえんです。
その点4ストロークエンジンはバルブによって完全に吸気と排気が分断されますので、そういったデメリットはない訳です。
燃費の面でも2ストロークエンジンは4ストロークエンジンよりパワーが得られる反面、燃費はどうしても悪化する傾向にあります。
結論から言えば、全て不完全な燃焼サイクルに起因している訳です。
2ストロークエンジンが4ストロークエンジンの倍の爆発回数を持っていることは既にご存じと思いますが、つまり燃料消費量も理論上は2倍という理屈です。
クランクシャフトの回転数が同じであっても2ストロークエンジンのほうが燃料を使います。
特に低回転域での燃費の悪さが際立つてしまいます。
回転数を上げればその出力の高さで効率も上がるのですが、2ストロークエンジンはどうしても燃費が悪くなる宿命です。
環境に優しくない2ストロークエンジン
大気汚染物質は燃焼の終わったあとのガスにも含まれますが、それより未燃焼状態の燃料のほうが有害な物質が多いので、吸気がそのまま排出されるというのは規制に対して大きなデメリットとなります。
エンジンの排気ガス規制は4ストロークエンジンも2ストロークエンジンも同じ基準ですので、より有害な物質を排出する2ストロークエンジンが規制をクリアするのにはハードルが高い訳です。
一応2ストロークエンジンでも触媒を使ったり、再燃焼装置を使ったりして改善は図られましたが、エンジンのもっとも基本的な構造の部分で4ストロークエンジンに遠く及びませんでした。
2ストロークエンジン最大の問題は排気ガス規制に対応が難しいことにあり、年々厳しくなる規制に対応できなくなったことから4ストロークエンジンへの置き換えが進み2ストロークエンジンが根絶した理由です。
エンジンの燃焼後の排気ガスにはさまざまな有害物質が含まれており、それを大気中に放出する量は排気ガス規制で厳密に規制されているのが現状です。
有害物質を減らすための規制なので環境重視の昨今にあっては規制は厳しくなる一方であり、4ストロークエンジンであっても厳しい場面が非常に多いのが現状です。
その規制に対応すべく、4ストロークエンジンは燃焼状態の改善を行ったり、触媒などの後処理装置による無害化も重要となっています。
メリットとして2ストロークエンジンにバルブがないことは吸気と排気のフリクションロスを減らすことに繋がっており、抵抗の少なさは出力を上げることに繋がっています。
構造のシンプルさから機関の軽量化 倍の爆発回数による出力の倍増等あります。
4ストロークエンジンのバルブ機構は行程を完全に分けて密閉も確保できる構造なのですが通路にフタをするようなものなのでバルブを開いてもそこには抵抗が生まれます。
吸気と排気の抵抗が高いと、その分混合気が効率的に入らなかったり、完全燃焼したガスが完全に排出できず、どちらもエンジンの出力が下がる原因となります
4ストロークエンジンでは色々な方法でバルブの空気抵抗を下げる工夫をしているのですが、そもそもバルブがない2ストロークエンジンには、この面では到底かないません。
そこでそれらのメリットを維持させデメリットを克服したのがECU制御のTPIと言う訳です。
丈夫なレーサ-エンジン
本題からかなり外れてしまいましたがTPIはレーサーエンジンですが、とても丈夫なエンジンです。
レーサーエンジンなので頻繁なメンテが必要とか言われますがそんなことはありません。
私は2019モデルにも乗っていましたが走行距離8000Kmでガケ落ちしてラジエター破損で焼き付きを起こす迄はノントラブルでした。
メンテは日々の点検とミクスチャのオイルの補充、2000km毎でギアオイルの交換
2stレーサーは高速とか走れるのか?
そしてけして快適では無いですが林道迄100kmの距離を高速も使いましたが余裕でした。
勿論ロードモデルのようには行きません
林道走行用のギアセッティングで精々90km/h巡行程度です。
もっと出ますが何か可哀そうな音に聞こえて出せませんでした。出して110km/h程度でした。
だから十分に移動出来ると言う程度に捉えてもらえれば良いかと思います。
街乗りは可能なのか?
他の方のレポートにありますが 意外と街乗りに適しているとか・・・
これは冗談じゃないと言いたいです。
こんなバイクでコンビニや友人宅やまして通勤等に使う気にはなりません。
先ず、ブーツ以外の靴を寄せ付けない針のむしろの様なステップ。
足つきの超悪い車高。
プッシュキャンセラーもないウインカースイッチ。
5kmでケツが崩壊する三角木馬シート。
先ずメインキーすらないので、そこらの街角においておけません。
そして、もし夜になったら ホタル電球のヘッドライトは一応H4・・・
結局このバイクは乗るのに装備面で構えます。
初心者には乗れないバイク?
2ストレーサーの公道走行仕様版なので初心者には扱いきれず無理とか良くあります。
本当にこのバイクに乗ってレポートしたのかよ、と言いたくなります。
そりゃ大昔のレーサーだったら判ります。圧縮比高いですからキックも降りず固いです。
寒い日車体を倒しオーバーフローさせてからコックを閉じ番手の低いプラグで火を入れるとかの儀式も無く!
今じゃセル付きだし・・・FIなんで寒い朝もチョークもいらず1発で始動出来ます。
確かに凄いピックアップと異次元のパワーがあるけれどアクセルを不用意に捻らなきゃ良い訳で低速も十二分にあります。
昔のレーサーみたいにパワーピークも考えたアクセルワークやシフトも等もしなくて良いので 不用意にアクセル開けなきゃ誰でも乗れます。
秀逸な前後のサスペンション
フロントにはWPホワイトパワーエクスプローラー5548製のサスを装備しています。
コンプレッションダンパー/リバウンドダンパー/プリロードアジャスターがあります。
リアはWPホワイトパワーエクスプローラー5746製のサスを装備しています。
コンプレッションダンパーには低速側/高速側の2種類があります。
リバウンドダンパーも勿論あります。プリロードは10mmライディングサグは110mmにしてあります。
2020モデルは、より緩やかなフィーリングになっているようです。
事実2019モデルでコンフォートセッティングだったのに2020モデルでは現在標準で走っています。
まとめ
結局の所この機体は2000Kmインプレッションと言っても出走前点検をきちんとしてさえすれば何処も劣化を感じず余裕で走行出来ていると言う、おもしろくない結果になってしまいました。
事実2019モデルでガケ落ち8000Kmで焼き付いたピストンは薄っすらカーボン程度の状態でした。
2019モデルにあったキックアームは2020モデルでは廃止になりました。
事実キックは1回も使った事がありませんでした。
しかし、先日友人がガレで転倒してセルボタンを折損紛失と言う稀な状態に遭遇したのでセルボタンは転倒してもヒットしない場所に変更しています
更にキルスイッチはシーソータイプとプッシュタイプの2個付いているのですが不用意にストールするのを避ける為シーソータイプの方は外してあります。
総じて皆さんレーサーと言いますが、とても丈夫な機関、機体と思います。
そして通勤通学、ツーリングにも・・・・とんでもない事ですと言っておきます。
今回は私の機体の2000kmインプレッションをお届けしました。